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text & photo by SETSU

平安貴族もすなる「匂い袋」というものを、我もしてみんとて

オリジナルお香、第2回は匂い袋にチャレンジ!

前回はお香の基本ともいえる"インセンス(線香)"を作ってみましたが、今回は《匂い袋》にチャレンジ。でも、匂い袋って、着物をタンスに入れるときに一緒に入れておく、あのおばあちゃんぽい匂いのことかしら……? うーん、前回以上に何も知らない状態で、いざ匂い袋つくりスタートです。

というわけで、まずはじめに匂い袋そのものの歴史についてお話していただきました。匂い袋をはじめとする香りの技術《合香》を日本に最初にもたらしたのは、一説によると、なんとあの鑑真和上なのだそうです。鑑真さんといえば奈良時代、唐から日本へ仏教を広めるため、4回の難破や遭難のために失明しながらも、とうとう5回目に日本に来ることのできた偉いお坊さんとして教科書に載っていた、あのお方ですか?あらあら。

その鑑真さんが香薬として唐から持ってきたのが調合香(お香の調合)の始まりで、その後、平安時代の貴族が遊びとしていろいろアレンジを加えていったのだとか。いろいろな香りの元が漢方薬としても使われていることは前回教えていただいたのですが、なるほど、薬と一緒に日本に入ってきたものだったのですな!

匂い袋は竜脳の香りがポイントです

では早速、平安時代のクラシックな匂い袋《衣被香(えびこう)》についての説明を聞きながら、いろいろな香原料を聞きつつ調合していきます。原料はインセンスとだいたい同じなのですが、匂い袋はインセンスと違って火をつけて香りを楽しむものではないので、現在基本的に常温では香りがしない「沈香(ぢんこう)」―木の樹脂―は使用しません。

匂い袋の香りとして重要なのは、スーッとしたメントールのような「竜脳(りゅうのう)」の香りです。もともと防虫用として使われたのが匂い袋の始まりなのだとか。竜脳は防虫剤や去痰薬として使われているものと同じものなので、クラシックな匂い袋を作るときには必ず入れるものなのだそうです。

また、平安時代の匂い袋には「麝香(じゃこう)」が必ず入っているとか。麝香は麝香鹿という鹿のオスの麝香腺分泌物を乾燥させたもので、入手するのがひどく難しいため、貴族が自分の力を見せつけるのに最適だったといいます。ちなみに現代でも麝香鹿はワシントン条約で守られているので、天然の麝香を採るのはとても大変。実際に香りを聞いてみると、これが…キッツーイ!!! でも、この香りをちょこっと混ぜることで、匂い袋全体に深み、コクが出るのだそうです。う〜ん、深すぎる世界。

とにかく混ぜて、平安時代の匂い袋(の中身)が完成!

そんなこんなで、いろんな知識を身につけながら香りを混ぜていきます。平安時代の人は現代の人ほどお風呂に入らなかったので(!)、香りが良く出るように粉末になったものを混ぜた様子。沈香、丁子(ちょうじ)、貝香(かいこう)などを混ぜていくうちに、平安時代の匂い袋(の中身)が完成しました。

できあがった香りを聞いてみると、実にスパイシー! カレーみたいな香りがします。服装にハヤりスタりがあるように、香りだって時代によって特徴があるわけですね。昔は白檀(びゃくだん)がハヤっているとしたら、戦後しばらくはローズの香り、90年代は無香料。最近はアロマテラピーなんかの癒し系と呼ばれているもの……。言われてみればたしかにちょっと前まで(今でも?)、無香料という言葉をあちこちで見かけましたよね。

さっそくタンスに。私はすっかり平安貴族!?

できた匂い袋(の中身)を和紙の袋に入れて、さらにきれいな布の袋に入れたら、いよいよ完成です! 早速家に帰って、つくった匂い袋をタンスに入れてみました。おだやかで重厚な香りが、匂い袋を入れただけで漂い始めました。うーむ。こんなに重たい香りって、そういえば初めてかも。

混ぜたまんま、あとは部屋のあちこち、もしくはポーチに入れて持ち歩くだけでホンワカといい香りに包まれるなんて、奥ゆかしい感じがするし、なんともステキ。ジワジワと来る重厚な香りに神妙にかしこまってしまった私は、すっかり平安貴族気取りで静かにタンスを閉めるのでした……。

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